薔薇は薔薇は♪




『フランスの薔薇』ツアー


記事にするのが遅くなりましたが、様々なTV番組でも紹介された北澤美術館に行って参りました。

アールヌーヴォーの硝子や東山魁夷などの日本画コレクションでも有名な美術館だそうですが、

恥ずかしながら、姉に言われ今回の企画展「フランスの薔薇」のTV特集を見て、ここを知りました。






大分前ですが、確か上野で開催されたアールヌーヴォー展に行ったことがあります。
ラリックのトンボやギマールのメトロ入り口が展示されていたような。物凄く混んでいたのを覚えています。
アールヌーヴォーは、特にここ日本で根強い人気があるそうです。
その造形の優美さもさることながら、これらの作品を導いたジャポニスムにも大きな要因があると言われています。日本趣味の逆輸入。


アールヌーヴォーは、19世紀末にヨーロッパ諸国で起こった芸術運動で、訳すと「新しい芸術」。
これはフランスの呼び方ですが国によって、ゼセッション(ウイーン)やリバティ(イタリア)、ユーゲントシュテイル(ドイツ)など色々あるようです。
(個人的にはユーゲントシュテイル―青春様式―って響きが好き…どうでも良い情報)。
世紀末って、私もその節目を経験しましたが、不安と期待が入り乱れ交差する群衆の興奮みたいなものがあって、終末と誕生を予感させるものがありました。
増してや、19世紀末と言えば、産業革命によって、機械化が進み始めた激動の時代。
機会化の恩恵を受ける反面、手仕事の大切さを人々は再確認した時代でもあったようです。
ん?何だか、今の時代と精神は変わらないような。
私も今やPCがないと生きていけない気がする反面、アナログ大好きだし、大切にしたいので。


とにかく、行くことになりました。北澤美術館!
旅を供にするのは、うちの姉です。キラキラしたもの好きの姉は、ガレのフランスの薔薇がどうしても見たかったのだそうです。
私も、長野は軽井沢と善光寺しか行ったことがなかったですし、湖畔の美術館なんてそれだけで絵になるので、とても楽しみでした。


スーパーあずさに乗っていざ諏訪へ。駅弁も美味でした。
あずさは新宿からの始発が9時とか10時とか、ちょうどきっかりなので、ついつい「8時丁度のー♪」と口ずさみたくなります。



上諏訪駅。

ホームに足湯がある!















駅から歩いて行ける距離でしたが、

自信がなかったのでタクシーで。

静かですが明るい佇まい。




ポスター左:ヒトヨダケ

ポスター右:フランスの薔薇









エントランスに入り、煌びやかな硝子のショップを抜けると、展示室があり、目玉でもあるヒトヨダケのランプが出迎えてくれます。
その名の通り、一夜限りで溶けてなくなってしまう茸なのだそうです。キノコは最近若い方達にも人気があると聞いたことがあります。
キノコ女子にはたまらない作品ではないかと思われます。


硝子は、繊細で透明なものの代名詞。そんな概念を、覆される作品を生み出した最初の人こそ、ガレだそうです。
初期の作品は、まだ硝子の透明感がありますが、展示品はほとんどが濃厚な作品でした。ドーム兄弟の作品もありました。
展示室には学芸員の方がいらっしゃいます。技法や意匠について説明して下さるので、見るポイントがよく分かって、鑑賞が充実します。
技法や、日本に影響を受けた文様やモチーフの取り扱い方などを始め、作品に込められた意味など、深読みしながら観ることができました。
そしてガレの植物学者としての一面や万博のプレッシャー、フランスの情勢や工房の事情などについても知ることができました。
姉のお目当てである「フランスの薔薇」は、植物学の同志の退官記念に贈ったものらしく、枯れ行く薔薇の後ろにみずみずしく復活する薔薇が。
薔薇はフランスの象徴。こんな風に多くの作品にフランスや故郷への思いが入っているのでした。


これらの作品は家庭の鑑賞に値する調度品として販売されていたようですが、ガレの工房はもうありませんし(1931年閉鎖)、
もしもこれを購入したら、それは高額なのでしょう。でもどこかにキッチュさを感じてしまいます。私だけかも知れませんが。
また、飴細工のような質感と、彩度の高い色の大胆な組み合わせ、「よくこういうモチーフの入れ方しようと思いつくなあー」という点などに、
ちょっと傾いた(かぶいた)感じを受けました。
「へうげもの」の漫画で言うと、利休の求めるものとは方向性の違う、織部の美学に近いのか(織部さんは歪みが売りですので)、
はたまた信長、秀吉?と思ったりしました。感性はやはり真似できない西洋らしさですが、こういったひょうげぶりに、懐かしさを感じるのかもしれません。
…全てにおいて、間違っても、質素な我が家の調度品としては、置ける代物ではありません(笑)。
(余談ですが、いつか、買える範囲では、ハッリ・コスキネンのブロックランプが欲しいです。でも、近くには売っていない…。)


展示室が暗めなので、妖艶なガラス作品たちの中で、幻想的な気分を味わいました。そこを出ると、夢から覚めたような錯覚に陥ります。
2階が日本画などのコレクション展示室になっているのですが、東山魁夷だけでなく山口華楊などの作品もあり、見応えがあります。
ガラスの空間に比べて2階の展示室はなんとなく親しみやすい感じがします。地域の作家さんの作品も展示されていました。


のんびり作品を見たあとは、ガラスの茶器で優雅にティータイム。フランスの薔薇ティーと和栗のモンブランをいただきました。


ミュージアムショップも堪能し、名残惜しい気持ちで諏訪湖の畔を散策。
湖畔には沢山のオブジェがあって、この地域の産業などがモチーフになっていました。
初めて見た間欠泉の噴出、凄かったです。ラッキーでした。後で知ったのですが、パワースポットの4つの神社があるそうです。行ってみたかった…。
その他レトロな建造物も建ち並ぶ、可愛い町です。



















またマスクの姉です(笑)。


でも、余裕を持ってのんびり過ごせたので良かったです。こんなゆったりとした美術館トリップが理想的だと思っています。
美術館が盛況なのは、喜ぶべきことだけれど、ぎゅうぎゅう鮨詰めの人波をかき分けて作品を必死に見ると言うのはどうも苦手です。
以前、凄く混んでいる水族館に行ったとき、「魚が展示されているのか、人間が展示されているのか、どっちなんだ(笑)!」と思ったことがあります。
今回は名実ともに贅沢なひと時を過ごせたと思います。『フランスの薔薇』ツアーですから!ほほほ。(ベルばら風に)







おまけ画像



遊覧船と鴨、かわいかったです。



プラレール諏訪バージョン

名物花火やお酒











それではまた丁度のあずさで!





「開館30周年記念特別展 北澤美術館所蔵『エミール・ガレ ベスト・オブ・ザ・ベスト』」2013年4月20日(土)− 10月20日(日)

次の記事へ

前の記事へ

喫茶室TOPへ戻る