愛しきと切なきと心強きと



野口哲哉展―野口哲哉の武者分類(むしゃぶるい)図鑑―



野口哲哉さん。TVで観た時から気になっていたこの方の作品。
リアルだけれど、どこかお茶目な甲冑を着た侍たちの造形。そして、行ってみたかった、練馬区立美術館。
日々美術への愛が募り過ぎて色々活動的になっております美術愛好家の姉と、展示期日中に何とか間に合い行けることになりました。










練馬区立美術館へは、黄色い西武池袋線を利用し、


中村橋と言うところで下車して徒歩3分のところ。

生憎の雨で、電車の窓も曇っております。
クルクルクルクル…






駅には色々な展示のポスターも貼ってありました。

ルソーのインパクト。

バルテュスも気になる。









野口氏の作品に導かれ


美術館に到着…。











美術館の前でマスクの姉。

雨は止む気配がありません。








少し早く着いたので、公民館のようなところで雨宿りさせてもらいました。太極拳をやりにきた奥様と、しばし談笑。



中の写真は撮れないので



館外のポスターをたくさん撮りました。











そろそろ開館時間です。









感想です。
思わずの第一声は、『かっ、可愛い…(心の声)』。写真や映像では解らないサイズ感。良い意味で小さいのです。
サイズはそれぞれで、大きいものでも、人間の実寸の半分か2/3くらい?小さいものですと手のひらに乗るサイズです。
着衣一つ一つのデザインにもテーマがありお洒落な感じでありました。
「愛おしき、おさむらいさん。」


明治時代(だったかな?)に実在した甲冑愛好家(というかプロ?)の方の自作の精巧な甲冑やそれを着た記念撮影などの写真もあり、
いつの時代にも、コスチュームプレイは存在するのだと嬉しくなりました。
作者の方は、実物の甲冑との区別のため絶対に実寸では作らないというポリシーがあるそうです。そこもまた、素晴らしい…。
そして、魅力はその作品一人一人の表情。彼らが見つめる先にある遠い何かに思いを馳せるとき、
作品それぞれが、人生を背負ってきたかのようなリアリティを感じます。また、現代社会に疲れたような、表情なき表情というのでしょうか。
「なにやら切なき、おさむらいさん。」

展示内容は作者自身の立体と絵画、そして書籍。制作の工程。それと絡めるようにして実際に昔作られた立体と絵画。
この構成が、余計に現実と虚構の線引きを曖昧にし、本当に昔こういった侍が居たのだろうか…という錯覚を起こします。
何より、作者が本当に楽しんで作品に向かい合い、この自由でリアルな虚構世界「でっちあげ」をつくりあげているのだろうなと思いました。
ただし、楽しむとは言っても、ここまでのものをつくりあげる時間、労力、知識、技術は並大抵のものではないでしょう。
乱暴な言い方をしてしまえば、同じようなアイデアって、結構何人かの人が思いついたりするかもしれません。
しかしそれを実現することができる人は、稀少なのだと思います。それは、歴史に精通した深い知識に基づいた甲冑の造形はもちろんのこと、
髭や脛毛、白髪の一本一本にまで妥協を許さない、精緻な作品の作りを見れば一目瞭然。
そういった意味で、この若き作家の非凡なる才能を感じました
また、若い世代だからこそ、サブカルチャーに裏付けられた独特のセンスが育まれたのだと思いました。
私は、作者のメモやラクガキのようなエスキース、道具、秘密兵器を見るのがとても好きで、ここでもそういった展示があったのは嬉しかったです。
漫画チックな構想スケッチもとても魅力的でした。

さまざまな解説は、作者ご自身によるものでした。とても謙虚な方だなあと思いましたが、ウイットにも富んでいました。
作者の方はもともと大学で油彩を専攻されていたそうで、経歴を拝見し、その表現を微笑ましく思いました。
(以下、「」内は野口哲哉自筆年譜より抜粋)
「2000年頃(20歳)学校で油彩画を学ぶ中、借りてきた絵画論が童心を駆逐。いつしか自分は芸術家の卵であると慢心し、絵画系学生に見られがちな天狗と化す。」
絵画学生は、技術や理論を少しかじった辺りで天狗になる傾向にある、これは美術系あるあるなのではないでしょうか…。
でもこう言った若さゆえの自負が創造のエネルギーになったりもするのだと思います。
多分、美術の中で花型であり絶対的権威?である油絵というものに縛られずこうしたスタイルに移行したのは、何かきっかけがあったのでしょうが、
とにかく吹っ切れないと、ここまで極められないと思います。
そういった意味で、作者の覚悟のようなもの、全作品に共通した強い意志のようなものが感じられました。
「心強き、おさむらいさん。」


というわけで、「愛しきと、切なきと、心強きと〜」を兼ね備えている世界観でした〜!(あくまで主観です、ごめんなさい)



個人的に標本のようなお侍さんに萌え萌えでした。欲しい!!買えない!
姉は特に、Red Man に釘付けになっており、またお目当ての紗練家侍(しゃねるけさむらい)が見られて満足そうでした。


企画展の図録はなく、作品集、ポストカードを購入。フィギュアは売り切れでした、さすがです!
海外にも多数のコレクターがいるそうで、まだまだお若いしこれからのご活躍が楽しみです。



練馬区立美術館は、展示室も充実しており、落ち着いた雰囲気でございました。
けっこうコアな感じの展示をやったりするので、また黄色い電車に乗って行ってみたいです。

野口哲哉展―野口哲哉の武者分類図鑑―
2014年2月16日(日)− 4月6日(日)練馬区立美術館
 

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